昔の管理職は人を育てるのが上手かったのか?

こんにちは!

まーさんです!


先日、とある企業の管理職研修を実施していた際に、オブザーバーとして参加していた幹部社員のから声をかけられました。

 

幹部社員「まーさん!今日の研修良かったよ!」

 

まーさん「ありがとうございます!」

 

幹部社員「研修を見ていて改めて思ったんだけど、最近の管理職は本当に人を育てるのが下手になったよね。」

 

まーさん「そうかなあ・・・?」(心の声)

 


実は、同じようなことを様々な企業の幹部社員の方から言われるんですね。

そして、何を隠そう私も自社では管理職・・・。

 

本当に、現在、会社で管理職を担う私たち世代は「人を育てること」が苦手なのだろうか?

 

お言葉ですが、私の上司が全員「人材育成が上手だった」とは言えません。

(もちろん、上手な方、尊敬できる上司も沢山いました。)


そんなモヤモヤを抱える中、ある書籍を読んでいて私の“違和感”を上手く説明してくれる内容に出会ったので一番ご紹介します!

 

その書籍がこちら▼

フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 (PHPビジネス新書) 中原 淳 (著)

 


中原氏いわく、「若い部下が育たないのは、職場環境の変化によって構造として生まれている現象」と言い切ります。

 

おー!

これは心強い。

昔の職場には上司が意識をして人材育成をしなくても「部下が育つ」諸条件が揃っていたそうです。

 

その条件とは以下3つ

1、長期雇用
2、年功序列
3、タイトな職場関係


なぜ、この条件が揃うと人材が勝手に育つのか、見ていきましょう。

 


1、長期雇用

 

 今は“幻想”に近い感じもしますが、バルブ以前は「長期雇用」が社会の中で“当たり前”とされていたようです。「終身雇用」という概念も日本企業の雇用形態を象徴するものです。(※これは、ジェイムズ・アベグレンが日本の雇用慣行を「lifetime commitment」と表現したことを日本語訳したものです。)

 長期雇用が前提だと、若手社員が結果を出せなくても、企業も「長い目で見てあげよう」と少し余裕を持って育成ができます。余裕があるから部下に成長の機会提供がしやすくなります。

 書籍の中でも指摘されていますが「人が大きく育つ瞬間」は「成功体験」をしたときよりも「大きな失敗」をしたときなのだそうです。

 これは私にも実感があります。

 成功体験が学びになり、成長の機会となっていることもありますが、過去を振り返り「あの時自分は成長できたなぁ。」と思えるのは、多くの場合、大きな失敗体験です。

 「A社から大きなクレームがあって、上司にサポートしてもらって、何とか挽回できなぁ。あのときは、本当に苦しかったけど、あの体験で顧客のヒアリングと物事を進める際の根回しの重要性を学んだなぁ。」という感じです。

 ただ、これは今の企業環境では難しくなっているのだと思います。

 私は人事部に異動前は営業部でマネジメントをしていました。営業の目標を掲げて部下の育成に関わると、部下が大きな失敗しそうな場面で“こける”前に手を出してしまう。だって、部下が大きなクレーム出してもフォローする時間が足りない・・・。こっちはマネジメントしながら自分もノルマを持っている。プレイングマネージャーですから!

 

 

2、年功序列

 

 これも“幻想”となりつつある考えですが、「年功序列」の会社では、定年までの道筋が一定となります。(※この「年功序列」も、ジェイムズ・アベグレンが日本的経営の特徴として紹介しています。)

 部下から見ると、上司は“自分の将来の姿”であり“ロールモデル”となります。上司がバリバリ仕事で成果を出して、自分より多くの給与をもらい、高級車に乗って、自分一人では到底入れないようなお店に連れて行ってくれる。そりゃ、部下も「今はきついけど、いつかは自分も・・・。」とやる気も高まると思います。

 ちなみに、現在は管理職候補の若手と面談をやるとこんな声が聞こえてきます。

「自分は昇進に興味ないです。昇進しても責任とプレッシャーばかり増えて給与増えないですもんね。」

「〇〇課長のような長時間労働はしたくないです。仕事より家族との時間が大切です。」

「〇〇部長のようなプレッシャーにさらされたら、俺は持たないですよ・・・。」

こんな感じです。

「頑張れば報われる」とは思っていません。そう思えない若手が増えているんですね。(もちろん、中にはそう思っている人もいますよ。)

 

こういう話を年配の幹部社員が耳にすると「お前たち、何を言ってんだ!俺がお前たちぐらいの年齢の時にはなぁ・・・」と説教と自慢話の絶妙なコラボレーションで、若手のやる気を下げてくれます。

 

 

3、タイトな職場関係

 

 これは長時間にわたって、同じ空間で仕事をすることを指します。

 最近は働き方改革の流れがあって、残業に対する企業の認識も変わってきましたね。ただ、私が新入社員として社会人となった頃(から、つい最近まで)企業では「残業」は当たり前だったと思います。

 「24時間働けますか?」とCMでやっていたぐらいですから、職場の同僚とも多くの時間を共有できたんですね。朝から終電まで仕事して、終わったら仲間と飲みに行って、カラオケで朝を迎えて・・・。

 「早く帰れ!」と昔の自分に言いたいですが、そんな働き方してました。

 そうやって職場の人と時間を共有する中で、プライベートの話はもちろん、仕事の話も沢山します。褒められたり、叱られたり、励まされたり・・・。飲み会で上司と語り合う時間は、面談のような役割を果たしていたんですよね。

 上司の側も自分たち部下のことをよく見ています。よく観察する時間がたっぷりある。だから、指摘も的確だし、叱られても「本当にそうだな。改めよう。」と思えることも多い。しかも、上司も一緒に長時間労働して頑張ってる姿を部下も見てますから「あんなにやってる人に言われちゃ、何もを言えんよな。」と私の場合はなってましたね。 

 

こうやって見ていくと(形はどうあれ)「確かに人が育ちそう」と思ってしまします。

 

もちろん、過去にも人材育成が上手な管理職の方は沢山いたと思うのですが、そういった育成スキルを持っていなくても、職場に先に見たような諸条件が揃っていたがゆえに“副産物”として人材育成が成立していたと見ることができるようなのです。

 

もちろん、この人材育成の土台となる諸条件は時代の変化によって変わっていきます。

バブル崩壊後、企業に余裕がなくなり、リストラの加速や若手の抜擢が行われることで「長期雇用」も「年功序列」も「タイトな職場関係」も職場では実現が難しくなります。

 

そして現在・・・。

 

幹部社員(=元管理職)に「最近の管理職は人を育てるのが下手になった。」と言われたら「ちょっと、待ってください!」と言いたくなります。

 

実際、現代の管理職の中には「自分には管理職向いていない。」「自分は人を育てる適性が無い。」と真剣に悩んでいる人も沢山います。

 

そんな人にこそ私は言いたい。

 

「部下が育たない原因は“あなたのせい”(だけ)ではないですよ。」

(管理職の努力も必要です。)

 

 

ということで、今日はここまで。

 

ありがとうございました。